潜水士免許を取った動機:NDT検査の延長線に見えた水中作業
私が潜水士免許を取得したのは、NDT検査員として約20年のキャリアを積む中で「水中検査」という選択肢が視野に入ったからだ。プラント設備には水槽・タンク・海洋構造物の検査需要があり、潜水士資格があればその領域に参入できる。
だが実際に取得後に受けた案件は、プラント水中検査ではなく水族館のイルカプール清掃だった。BtoB構造(水族館運営会社との直接取引)で、立場は対等。現場責任者として清掃計画を組み、作業を完遂する形式だ。
当初は「これも水中作業の実績になる」と考えて受注した。だが1年続けた結果、案件数の少なさという構造的な壁にぶつかり、継続を見送った。この経験から見えた「副業の継続条件」を3つの軸で整理する。
継続条件①:案件数が年間を通じて確保できるか
潜水士副業の最大の問題は案件数の絶対的な少なさだった。水族館のイルカプール清掃は定期案件だが、頻度は年に数回程度。プール清掃のタイミングは水族館の営業スケジュールと施設メンテナンス計画に依存するため、こちらから案件を増やすことはできない。
『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』で三戸政和が指摘する「ストック型ビジネスの重要性」は、副業でも同じ構造が働く。単発案件を積み重ねるフロー型では、営業コスト・待機時間・機会損失が大きくなり、時間あたりの実質収益が下がる。
NDT検査は定修シーズン(春3〜5月・秋9〜11月)に集中する繁忙期があり、その間は本業に専念する。潜水士案件が閑散期(6〜8月・12〜2月)に集中していれば補完関係が成立するが、実際には本業の繁忙期と重なることもあり、スケジュール調整の難易度が高かった。
副業を継続するには「年間を通じて受注できる案件数」と「本業との時間的補完関係」の両方が成立する必要がある。潜水士BtoB清掃はこの条件を満たさなかった。
継続条件②:対等構造が維持されているか
潜水士のイルカプール清掃が1年間続いたのは、BtoB構造で立場が対等だったことが大きい。水族館運営会社との直接取引であり、清掃計画の立案・作業手順の提案・安全管理の責任を私が担う形式。発注側は「清掃の専門家」として対等に扱ってくれた。
これは、私が過去に半年で終了した**家電修理副業(Panasonic業務委託)**との決定的な違いだ。家電修理は「対面×故障対応×立場が不当に低い×感情労働」の4要素が重なり、忌避ラインを超えた。顧客から「直してもらって当然」という態度で接されることが多く、修理技術者としての専門性が尊重されない構造だった。
『マーケット感覚を身につけよう』でちきりんが指摘する「市場で値段がつく感覚」は、副業選定でも重要だ。発注側が「対価を払う価値がある」と認識している案件は対等構造になりやすく、そうでない案件は不当な扱いを受けやすい。
潜水士清掃は「水中作業のリスクと専門性」に対価が支払われる構造であり、家電修理は「故障という不快を解消するサービス」として感情労働が前提になる。この構造の違いが、継続判断を分けた。
継続条件③:忌避ラインを超えていないか
私は副業を選ぶ際に「BtoC/BtoB」の軸ではなく、**「対等構造か不当扱い構造か」**の軸で判断している。BtoCでも対等構造なら受けるし(発信・SNSは対等構造なので継続中)、BtoBでも理不尽構造なら忌避する。
潜水士清掃は対等構造を保っていたが、案件数の少なさという物理的制約が忌避ラインに触れた。「待機時間が長すぎて時間あたり収益が低い」「本業との調整コストが高すぎる」という状態は、対等構造であっても継続に値しない。
『新版 小さな会社★儲けのルール』で竹田陽一が語る「弱者の戦略」は、リソースの集中配分を前提とする。潜水士案件に時間を割くよりも、NDT検査のキャリア深化・法人事業の成長・FI計画の実行に集中したほうが、50歳ゴールに向けた時間配分として合理的だ。
副業は「やれるからやる」ではなく、「やる意味があるからやる」で選ぶ。潜水士清掃は意味があったが、継続する意味は薄かった。
まとめ:副業は「構造」と「案件数」と「時間配分」で選ぶ
潜水士免許でイルカプール清掃を1年経験して、副業継続の判断軸は次の3つに整理できた。
- 案件数が年間を通じて確保できるか:フロー型案件は営業コスト・待機時間が大きく、時間あたり収益が下がる
- 対等構造が維持されているか:専門性が尊重され、対価が正当に支払われる案件を選ぶ
- 忌避ラインを超えていないか:対等構造でも、時間配分・調整コストが高すぎる案件は継続しない
潜水士清掃は「チャンスがあれば再開する」選択肢として残しているが、現時点では優先度が低い。NDT検査・法人事業・FI計画に集中するほうが、38歳から50歳までの12年スパンで見たときの時間配分として合理的だ。
副業は「できること」ではなく「やる意味があること」で選ぶ。この判断軸が、継続する副業と撤退する副業を分ける。
関連書籍
- 『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』:Amazonで見る / 楽天で見る
- 『マーケット感覚を身につけよう』:Amazonで見る / 楽天で見る
- 『新版 小さな会社★儲けのルール』:Amazonで見る / 楽天で見る
参考
- 厚生労働省「潜水士免許について」:https://www.mhlw.go.jp/
- 国税庁「副業所得の確定申告」:https://www.nta.go.jp/