暗号資産を持つ理由と持たない理由
私は現在、暗号資産を保有している。ただし「推奨する」つもりはまったくない。ここに書くのは自分の距離の取り方の記録であり、投資判断を他人に押し付けるものではない。
保有している理由は3つある。第一に、金融資産のポートフォリオに「株式・債券・不動産以外の選択肢」を置きたかったこと。第二に、ブロックチェーン技術そのものへの関心。第三に、売却タイミングを自分で決めたくなかったため「ガチホ(長期保有)」前提で放置できる資産が欲しかった。
一方で持たない理由もある。最大の障壁は税制だ。暗号資産の売却益は雑所得扱いであり、給与所得や事業所得と合算されて累進課税が適用される。含み益が出ていても、売却すれば翌年の確定申告で最大55%(所得税45%+住民税10%)の税率がかかる可能性がある。NISA口座の株式なら非課税で売却できるが、暗号資産にはそのような優遇措置はない。
私が保有を続けているのは「売らない」という選択をしているからだ。含み益がある状態でも、税金を払って現金化するメリットが現時点では見えない。生活費は事業所得と配当所得で賄えており、暗号資産を現金化する必要性がない。必要になったときに初めて売却を検討する。それまでは放置する。
雑所得課税の厳しさを実感する場面
暗号資産の税制が厳しいことは理屈では理解していたが、実際に含み益が出た状態で「売却したらどうなるか」を試算してみると、その厳しさが体感として迫ってくる。
例えば、購入時50万円だった暗号資産が150万円になったとする。含み益は100万円だ。ここで売却すると、雑所得として100万円が他の所得と合算される。仮に事業所得と給与所得の合計がすでに900万円あった場合、雑所得100万円が加わることで課税所得は1,000万円を超える。この領域では所得税率が33%、住民税10%で合計43%の税率が適用される。100万円の利益に対して43万円が税金として消える計算だ。
実際には控除や経費もあるため単純計算ではないが、「売却益の半分近くが税金で持っていかれる」という感覚は誤りではない。これがNISA口座の株式なら非課税なのだから、制度設計の違いが資産選択に与える影響は大きい。
私は現時点で売却する予定はない。理由は2つある。第一に、生活費を賄う必要がないこと。第二に、将来的に税制が変わる可能性を待つ余裕があること。もちろん税制改正を期待して保有を続けるのはギャンブルに近いが、少なくとも「今すぐ売らなければならない理由」がない以上、ガチホを続ける選択肢を取っている。
会計ソフトとの連携と記録の実務
暗号資産を保有している場合、会計ソフトへの記録方法が問題になる。私は取引所の残高を定期的に確認し、含み損益を把握する程度にとどめている。売却していない以上、確定申告上の所得には影響しないため、帳簿には記録していない。
ただし、将来売却したときのために取引履歴は保存している。取引所が提供する年次レポート機能を使い、CSV形式でダウンロードして外部ストレージに保管している。税務署から過去の取引履歴を求められたときに対応できる状態を維持しておく。
MoneyForwardなどのクラウド会計ソフトは一部の取引所と連携できるが、私は手動管理を選んでいる。理由は、取引頻度が低いこと、連携による情報漏洩リスクを避けたいこと、手動のほうが記録の意図を自分で制御できることだ。年に数回、スプレッドシートに取引所残高をコピーして推移を眺める程度の運用にとどめている。
売却タイミングの判断基準
私が暗号資産を売却するタイミングは、次の3つのいずれかが満たされたときだ。
第一に、生活費や事業資金として現金が必要になったとき。NISA口座の株式や預金を使い果たした後、最後の選択肢として暗号資産を売却する。現時点ではその予定はない。
第二に、税制が変わったとき。例えば暗号資産の売却益が分離課税になる、あるいは一定額まで非課税になるといった改正があれば、売却を検討する。ただしこれは期待ではなく「もしそうなったら」という条件付き判断だ。
第三に、暗号資産そのものの価値がゼロに近づいたとき。技術的欠陥や規制強化によって暗号資産市場が崩壊する可能性はゼロではない。その兆候が見えた時点で損切りする。ただし現時点ではその判断をする材料はない。
売却しない理由は「含み益を守りたい」というより、「税金を払って現金化するメリットがない」ことに尽きる。必要性が出たときに初めて売却を検討する。それまでは放置する。
まとめ
暗号資産を保有することは、税制・ボラティリティ・規制リスクを引き受けることと同義だ。私は「ガチホ」という選択をしているが、これは万人に推奨できる戦略ではない。
雑所得課税の厳しさは、含み益が出た時点で試算してみると実感できる。売却すれば利益の半分近くが税金で消える。NISA口座の株式と比べれば、制度的に不利な資産だ。
私が保有を続けているのは、生活費を賄う必要がなく、売却タイミングを自分で決めたいからだ。将来的に税制が変わる可能性を待つ余裕がある。ただし期待ではなく、あくまで「今すぐ売る理由がない」という消極的選択にすぎない。
投資判断は自己責任だ。この記事は私の距離の取り方を記録したものであり、暗号資産投資を推奨するものではない。
参考
- 国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」 https://www.nta.go.jp/
- 金融庁「暗号資産交換業者登録一覧」 https://www.fsa.go.jp/
- 国税庁「所得税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
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