単価で選んだら失うもの
繁忙期に複数の案件が同時に入ったとき、あなたはどう選ぶだろうか。単価が高い方を優先するのは合理的に見えるが、私は38歳のときにこの基準を否定した。
株式会社USと個人事業USサービスを併営する私にとって、春と秋の繁忙期は案件が重なる。ある年の春、3件の案件が同じ週にバッティングした。単価順に並べると、A社が日当3.5万円、B社が3万円、C社が2.8万円。単純計算ならA社一択だが、私はC社を選んだ。理由は「先に約束していたから」だ。
この判断を支えたのは、事前に明文化していた優先順位だった。
優先順位は4段階で定義する
私が実際に運用している案件選択の優先順位は次のとおりだ。
- 義理・信義:過去に助けられた相手、こちらが先に約束を破った相手、窮地を救ってくれた相手からの依頼は最優先
- 先約順:先に受けた案件を優先する(時系列の公平性)
- 単価:同条件なら報酬が高い方を選ぶ
- 長期取引:継続取引先だからという理由だけでは上位に来ない
金額は3番目、長期取引は最後だ。この順序は、2年前に案件を断ったときの後悔から生まれた。
当時、私は単価の高い新規案件を取り、先約のB社を断った。B社は「次回は声をかけてください」と言ってくれたが、その後2年間、一度も依頼が来ていない。単価差は1日5,000円、総額で3万円程度だったが、失ったのは信頼と今後の取引機会だった。
義理・信義が最上位に来る理由
優先順位の1位に「義理・信義」を置いたのは、NDT検査の現場では人間関係が仕事の命綱だからだ。
18歳から20年この業界にいるが、技術力だけで継続的に仕事が来ることはない。「あの現場で助けてもらった」「急な欠員を埋めてくれた」という記憶が、次の依頼に繋がる。逆に、約束を破った相手からは二度と声がかからない。
実際、私が最優先するのは次のような相手だ。
- 過去に助けられた相手:設備トラブルで夜間対応を手伝ってくれた協力会社、融資の保証人を引き受けてくれた知人
- こちらが先に約束を破った相手:家族の急病で現場を途中退出したときのクライアント
- 窮地を救ってくれた相手:創業直後、案件がゼロのときに声をかけてくれた取引先
これらの相手からの依頼は、単価や時期に関係なく受ける。金額で判断すると、後から「あのとき断らなければ」という後悔が残る。
先約順は時系列の公平性
義理・信義に該当しない場合、次は「先約順」で判断する。これは時系列の公平性だ。
先に約束した相手を優先するのは、ビジネスの基本だと思っている。後から高単価の案件が来ても、先約を断れば「金で動く相手」と見なされる。短期的には得でも、長期的には信用を失う。
実際、私は先約を守ることで「約束を破らない人」という評価を得てきた。これが「うりさんなら安心して任せられる」という信頼に繋がっている。
単価は3番目だ。同じ時期に打診があり、義理も先約もない場合に限り、報酬で選ぶ。ただし、この条件が揃うことは年に1〜2回程度しかない。
長期取引は最後に置く
意外かもしれないが、「長期取引先だから」という理由だけでは優先順位は上がらない。
長期取引は「過去の実績」であって「今回の約束」ではない。義理・信義があるなら1位に来るが、単に「毎年依頼が来る」だけなら、先約や義理のある相手より下位になる。
この基準を明確にしたのは、ある長期取引先から「毎年取引しているのだから優先してほしい」と言われたときだ。しかし、その案件は先約があり、しかも単価が低かった。私は丁寧に事情を説明し、別の日程を提案した。結果、相手は納得し、翌年も依頼が来た。
長期取引を「当然優先される権利」と誤解すると、双方に歪みが生まれる。毎回の依頼を「新しい約束」として扱うことで、関係が健全に続く。
優先順位を明文化する効果
この4段階の優先順位を明文化してから、案件選択の迷いが消えた。
以前は、案件がバッティングするたびに「単価を取るか、義理を取るか」で悩んでいた。判断が遅れると、どちらの相手にも迷惑をかける。明文化後は、問い合わせを受けた瞬間に優先順位が判定でき、即答できる。
また、断る相手にも基準を説明できるようになった。「先約があるため今回はお受けできません」と伝えれば、相手も納得しやすい。単価や気分で断ったと思われるより、ずっと信頼関係が保てる。
まとめ
案件がバッティングしたとき、単価だけで選ぶのは短期的な最適解に過ぎない。私が実際に運用している優先順位は「義理・信義>先約順>単価>長期取引」だ。
金額は3番目、長期取引は最後。この基準を明文化することで、判断の迷いが消え、信頼関係が強化された。
繁忙期に複数の依頼が来たとき、あなたは何を基準に選ぶだろうか。優先順位を事前に定めておくことで、その場の感情や金額に流されない判断ができる。
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