38歳で「月5万円の役員報酬」を2年続けて分かった、一人法人の社会保険設計が機能する3つの条件

月5万円という設定の正体

株式会社USを設立してから2年が経過した。役員報酬は月50,000円で据え置いている。この金額は「社会保険の最低等級を維持できる下限」として設計したものだ。

法人を作った理由は3つあった。1つ目は社会保険への加入。個人事業主のままでは国民健康保険と国民年金の組み合わせになるが、法人を持てば厚生年金・健康保険に入れる。2つ目は有期社員や業務委託の発注窓口としての信用。人を雇う側・外注を出す側として動くとき、法人名義のほうが取引先の受け入れがスムーズだった。3つ目はタイミング。「とにかく早く」という意識が先行した。

50,000円という額面は、健康保険・厚生年金の標準報酬月額等級表で最も低い区分に該当する。ここを下回ると社会保険の資格を維持できなくなる。上回れば保険料負担が増える。固定費を抑えつつ制度を活用する境界線として、この金額を選んだ。

個人事業を畳まなかった理由

法人を作ったからといって個人事業(USサービス)を畳む選択はしなかった。理由は「汎用性と思い入れ」だ。

個人事業は開業当初から使ってきた屋号で、取引先との契約や銀行口座、クレジットカードもすべてこの名義で動いている。法人に一本化すれば管理は楽になるが、個人名義でないと受けられない案件や、個人事業主としての立場が有利に働く場面もある。NDT検査の現場では、個人事業主として動くほうが小回りが利く案件が実際にある。

個人・個人事業・法人の3つの口座を管理するのは煩雑だ。これは否定しない。ただ、計画や設計が好きな自分としては、この煩雑さをメリットと感じている部分がある。3つの財布をどう使い分けるか、どの経費をどちらに寄せるか、資金繰りをどう組むか。その設計自体が面白い。

将来的に従業員ができた場合は、法人に一本化することも考えている。ただし現時点では構想であり、決定ではない。

固定費の増加という現実

法人化を後悔しているわけではない。ただし「先に知りたかったこと」はある。それは固定費の増加だ。

役員報酬を月50,000円に設定すると、健康保険料・厚生年金保険料の本人負担と会社負担を合わせて月額2万円台後半の固定費が発生する。年間で約30万円。これに法人住民税の均等割(兵庫県の場合は年7万円)、税理士報酬(年間契約で月数万円規模)が加わる。

個人事業だけで動いていたときは、国民健康保険と国民年金で年間40万円程度だった。法人を持つことで社会保険料の質は上がったが、税理士報酬と均等割の分だけ確実に固定費は増えた。この増加分を吸収できる売上と利益が立つまでは、キャッシュフローに気を配る必要がある。

設立当初は日本政策金融公庫の創業融資でキャッシュを厚めに確保していたため、固定費増加の影響は薄かった。ただし融資返済が始まると、月々の固定費と返済額の合計が個人事業時代より明らかに重くなる。この重さを「法人を持つコスト」として織り込んでおくべきだった。

「最低等級維持」が機能する条件

月50,000円の役員報酬設計が機能するのは、次の3つの条件が揃ったときだ。

1つ目は、個人事業との併営で十分なキャッシュフローが回っていること。法人からの役員報酬だけで生活費を賄うのは不可能なので、個人事業側の売上が安定している必要がある。私の場合はNDT検査の案件を個人事業で受けており、そこから生活費を確保している。

2つ目は、社会保険の質を優先できること。国民年金より厚生年金、国民健康保険より健康保険のほうが保障内容は厚い。この差に価値を感じるかどうかが分かれ目になる。私は将来の年金受給額と傷病手当金の存在を重視して厚生年金を選んだ。

3つ目は、固定費増加を許容できる事業規模があること。年間の固定費増加分(税理士報酬+均等割で年40〜50万円程度)を吸収できる利益が立つ見込みがなければ、法人化のタイミングは早すぎる。私の場合は融資を引いた時点でキャッシュに余裕があったため、増加分を許容できた。

この3つが揃わない段階で法人化すると、固定費が先行してキャッシュを圧迫する。「法人を持つこと」自体が目的化せず、事業の実態に合わせて判断する必要がある。

2年回して見えた運用の型

月50,000円の役員報酬を2年続けた結果、この設計は「社会保険を維持しながら固定費を抑える最低ライン」として機能している。ただし万能ではない。

個人事業との使い分けが前提になるため、どちらで売上を立てるか、どちらで経費を落とすか、資金移動のタイミングをどう組むかという設計が常に必要になる。マネーフォワード クラウド会計で法人・個人事業の両方を管理し、残高試算表のBSとPLを毎月確認しながら現金の流れを整理している。

固定費の重さは変わらない。ただし「重さを知った上で選んでいる」という状態になれば、後悔はない。法人化を検討している人は、固定費の増加分を具体的に試算し、その増加を吸収できるキャッシュフローが回るかを先に確認してほしい。

私自身は、この設計をあと数年は続ける予定だ。従業員を雇う段階になったら、役員報酬の見直しと法人への一本化を改めて検討する。

関連記事

まとめて読む: 個人事業と法人の併営

← ブログ一覧へ戻る